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2023.04.26

コラム更新のお知らせ

【データで読み解く不動産市況】第1回:データで見る地価動向~23年地価公示の分析~

公的に公表される地価には、公示地価、路線価、基準地価などがあります。そのなかでも
毎年3月に国土交通省から地価公示の中で発表される「公示地価」は、路線価や固定資産税評価額のベースにもなることから、最も重要な位置付けの地価と言えるでしょう。
また、土地価格の推移や変動率を丹念に見ることで、不動産市況を分析することもできます。今回のコラムでは、23年の大都市圏の地価公示の分析を行います。

2023年地価公示の全国俯瞰

2023年の地価公示は、「コロナ禍が落ち着きつつあり、景気回復が緩やかに持ち直している中で、どれくらい地価が回復あるいは上昇しているのか」に注目が集まりました。

全国の全用途(全用途とは、住宅地・商業地・宅地見込地・工業地)平均で前年比+1.6%となり、ミニバブル期の最終局面となった2008年の+1.7%に匹敵する大きな伸びで、2年連続の上昇となりました。
全国平均を用途別にみれば、住宅地は+1.4%(前年は+0.5%)、商業地では+1.8%(前年は+0.4%)と、いずれも上昇幅が大きくなりました。

公示地価 前年平均変動率 (住宅地)
公示地価 前年平均変動率 (商業地)

ここ数年の公示地価をみれば、新型コロナウイルスの影響で21年分では落ち込みが見られましたが、22年には回復傾向が見えはじめました(20年の地価公示は、大きく上昇。これは価格時点が1月1日であり、新型コロナウイルスの影響がないため)。
そして、23年分では地域や用途に差はあるものの、都市部を中心に上昇幅が拡大、そして地方へ上昇範囲が拡大しており、コロナ前への回復基調であり、あるいはそれを超えるエリアも出始めてきました。
全国的に住宅地地価の上昇している理由として
①共働き世帯が増えており世帯合算所得が上昇していること
②住宅ローン減税が効いていること(所得控除ではなく、税控除の効果は大きい)
③低金利が続いていること(変動金利は、金融機関が競い合っているためとくに低い)
などの要因から、住宅需要が引き続き堅調が続いているからでしょう。
また、こうした傾向は地方へも波及し、特に地方中心都市の周辺部で大幅な地価上昇がみられました。

大都市圏の状況

ここからは大都市圏の状況を見てみましょう。
3大都市圏(東京圏・大阪圏・名古屋圏という呼び方をします)全体では、全用途は+2.1%(前年は+0.7%)、住宅地は+1.7%(前年は+0.5%)、商業地は+2.9%(前年は+0.7%)と、いずれも前年からプラスの幅が拡大となりました。
東京圏、大阪圏、名古屋圏では、すべての域圏で、全用途、住宅地、商業地、のいずれも上昇、また上昇幅が拡大となりました。
なかでも住宅地は、08年以降最高の伸びを示していた20年を超える伸びとなりました。一方、商業地ではプラスの幅が拡大しましたが住宅地のように20年の伸びを超えるまでには至っていません。

東京圏、関東地方の状況

東京圏(東京都区部や多摩地区、神奈川県・千葉県・埼玉県の主要地域など)では全用途平均で+2.4%(前年は+0.8%)、住宅地は+2.1%(前年は+0.6%)、商業地は+3.0%(前年は+0.7%)となりました。いずれも昨年よりも上昇幅が拡大しました。住宅地は、昨年に引き続き23区全てで上昇、また上昇幅も全区で拡大しました。とくに駅前再開発の進む中野区や、足立区の綾瀬駅周辺などでの大きな伸びが見られました。

東京圏を形成する都県では、東京都の住宅地地価の変動率は+2.6%、神奈川県は+1.4%、千葉県+2.3%、埼玉県+1.6%とすべて前回比プラス、かつプラス幅も大きくなっています。好調ぶりがうかがえます。
インバウンド需要の回復、また国内商用・観光での首都圏への来訪が増える傾向にあり、商業地地価上昇は24年へかけても続くでしょう。

大阪圏の状況

大阪圏(大阪府全域、兵庫県・京都府・奈良県の主要地域など)では、全用途平均で+1.2%(前年は+0.2%)、住宅地は+0.7%(前年は+0.1%)、商業地は+2.3%(前年は±0%)となりました。
住宅地では、大阪市では+1.6%、神戸市は+1.2%、京都市は+1.2%と関西3大都市は全てプラスとなりました。大阪市の中心街である梅田へのアクセスがよい福島区、神戸市の中心街である三宮へのアクセスがよい灘区などの上昇が目立ちました。また、奈良市の近鉄大和西大寺駅周辺では再開発が進み、近隣住宅地は10%以上の上昇となりました。

 
府県別に見れば、大阪府+0.7%、京都府+0.7%、兵庫県+0.7%(関西主要3府県は同じでした)、奈良県+0.4%、滋賀県0.6%となっています。関西地方は概ねどのエリアも上昇しています。
21・22年と上昇が見られなかった商業地ですが、23年はプラスとなりました。インバウンド観光客に人気の地域を多く抱えており、24年も上昇が期待できます。
また、25年には大阪万博の開催、そして29年秋予定のIR施設の開業に向けて、関西圏はしばらく好調が続くでしょう。

名古屋圏の状況

名古屋圏(愛知県の主要地域、三重県の一部など)では、全用途平均で+2.6%(前年は+1.2%)、住宅地は+2.3%(前年は+1.0%)、商業地は+3.4%(前年は+1.7%)となりました。名古屋圏では、全用途、住宅地、商業地、いずれも3大都市圏では最大の伸びとなりました。住宅地では名古屋市中区が+11.1%、東区が+6.5%、東海市では+7.8%などが目立ちました。
再開発の進む名古屋中心街を中心に商業地・住宅地とも、24年に向けて地価上昇が見込まれます。

次回のコラムで、地方圏の地価状況と24年の地価の見通しについて解説します。

執筆
一般社団法人DX不動産推進協会
顧問 吉崎誠二